1月25日(土) 斐川プラザホテルで 『家庭医について〜医療・国際保健に関心のある方へ〜』 という講演会を開催しました。参加者は学生が8名、職員が27名の総勢35名となりました。
 講師は東京ほくと医療生協の藤沼康樹医師をお招きしました。日本家庭医療学会の大会長でもあられ、東京北部にある浮間診療所で日々の診療をしつつ、医学教育を学ぶためイギリスのダンディー大学の通信課程を受講しておられる、本当にパワフルな藤沼先生です。浮間診療所では地域の方へのアンケートに取り組まれ、地域の医療ニーズなどの研究もしておられます。講演は参加者を魅了した一時間半でした!家庭医という新しいワードですが、どんな講演だったか、振り返ってみたいと思います。


★浮間診療所へやってきた2年目研修医がみた、実際の地域の患者さんから
 浮間診療所で経験した患者さんは0歳から88歳まで多層に渡り、内科の疾患から整形・妄想性障害など様々。
 研修では、「どうしてこの時、受診に来られたのか」、「どんな背景をお持ちなのか」を聞き出すコミュニケーション能力やスキル、その患者さんの家庭背景なども考慮しながら、患者さんを全人的に診ていくことに力をそそぐ。 
 医学的な治療だけでなく、患者さんの要求とはなにか??地域の期待している医療とは何か??を考えながらすすんでいく研修。この考え方が今後の医師としての人生の素地となる。⇒医療の考え方にもつながる。

★地域住民の実際
 地域住民の病院にかかる割合(Whiteらの研究より)
 1000人の住民の内、約8割は症状を訴えている。約3割が受診を考える。約2割は受診する。約1割が入院する。1人は大学病院に入院する。
(浮間診療所での調査でも同じ。先進国でも共通している。)
1000人の内の約2割しか受診しない。その他の人たちの健康はどうなっているのか・・・地域のQOLは・・・
地域全体を考える視点を持つ医師・医療


★現代の医療はどうなっているのか?


医療の目的とは何か?・・・
 命を救い、疾患を治すという明確なものなのか?(国際的な倫理センターであるhastingsセンターでも結論はまだ。議論の状況は以下)

 医療の目的とは・・・                  病気や怪我の予防や健康の維持、病気からくる疼痛からの開放、救急治療とケア、慢性疾患のケア、早すぎる死の回避、安楽な死を求めること・・・                  
 医療の目的でない・・・                 ただ、命を救い生き長らえさせること。 
現代医療の矛盾の構図

医療の目的
VS
The Biomedical Model

The Biomedical Model ・・・


 医療とは応用生物学であるとする。
 精神心理的・社会的・文化的・政治的な問題や対人関係などは捨象する医療。



○医療の目的から見た現代医療の問題点は何か?
・予防に対する関心が低すぎる。
・痛みや症状自体の緩和に対する関心が低すぎる。
・慢性疾患に対するケアが軽視されている。
・延命に過剰に焦点があたっている。

○これから21世紀の予想される日本のヘルスケアの特徴とは?
超高齢化社会、医療費の高騰、消費者主義、エコロジーと人権、安全な医学医療



○地域の人が望む医師、医療とはどんなものか?
患者さんはかかりつけ医に何を期待しているのか?(大野毎子らの研究より)
・責任を持って患者の問題解決に当る  ・患者とうまくコミュニケ−ションがとれる  ・受診のための環境がよい
・患者のことをよく知っている  ・親近感や信頼感があり、心理的障壁が少ない

地域の人がかかりつけにしたいと思う医師はどんなものなのか・・・   調査により明らかになる

○21世紀の日本の医療の特徴と地域の要求からみて、これから求められる医師とは!?

子供からお年寄りまでみる新しいタイプの かかりつけ医「家庭医」とは!

・家庭内全てのメンバーの医療需要に応えられ身近で継続医療のできる医師
・地域で発生する健康問題の90%に対処可能な医師
・診療範囲 内科、外科、小児科、産婦人科、精神科、皮膚科、眼科、耳鼻科、整形外科、カウンセリング、その他全ての医療問題の初期対応を行う医師
・「あなたの専門医」ですと言える医師 
・性別、年齢、臓器といったものに制限されることなく対処する医師
・「よろず相談医」


○地域医療にふさわしい医師  〜WHOがあげる5つ星のドクター!〜
☆保健・予防のできる質の高い医療ができる医師        ☆コミュニケーション能力に優れた医師
☆適切な意思決定ができる医師                  ☆経営・運営能力に優れた医師
☆地域全体のリーダーシップのとれる医師

○参加された学生さんの感想文から(一部抜粋)
★地域医療の素晴らしさ、卒後研修で何を学びたいかを明確にしておかなければならないことの大切さを知ることができました。また、家庭医やこれからの医師に求められるものの様々なものを知ることができました。
★率直に言って面白い講演でした。ここまで地域のことを考えて行動するものとは思いませんでした。実際に調査を行う行動力などに驚かされました。
★自分が目指していた医療の形が間違っていなかったことを確信しました。その一方で新たな視点が与えられた。この理想を実現するために、先生が言われたように横のつながりが大切であると特に思いました。一人でやることには限界があるので、みんなでもっと協力できる体制作りが必要ですね。
★家庭医は地域住民全体を考慮に入れた医師なのだということが分かりました。ローカルでありながら、実にグローバルな考え方をして行く必要があるのだと思いました。大学での医学教育にもプライマリケアを導入した方がより良い医師になれるのでは?と感じました。
★個人のニーズだけではなく、地域のニーズ対応にすることの大切さがすごく伝わってきました。
★大学では教わったことのない内容が盛りだくさんで、もっと大学の授業に取り入れたり、ディスカッションする機会がもっと必要だと強く感じました。私は社会医学研究部に属しているのですが、来年度からの研究テーマを考える上で、とてもよい刺激になりました。今年度は脳卒中の多い地域で患者さんの食生活を中心に調査したのですが、いまいち何が本当の問題なのか分かりませんでした。もっと奥に隠されている、色んな地域の問題を引き出すにはどうしたらいいのか、今日のお話を部員にして、またディスカッションしたいと思います。

○最後に・・・
 この藤沼先生の「家庭医について」のお話は、学生だけでなく、参加した多くの職員が感動しました。
 家庭医についてのお話でしたが、内容はまさに、民医連の医療実践、目指すものだったと振り返っています。浮間診療所での地域の多くの方々へのアンケート活動や、それに基づいた医療実践の紹介などは、地域の声から始まる医療だと実感しました。医療も社会的な情勢の中で、困難な場面が多々あります。
 しかし、民医連の院所は常に組合員さんや友の会の方々に支えられて発展してきた歴史をもつものであることを考えれば、この厳しい情勢の中でこそ地域の方々の健康や医療を守る取り組みこそが、今やるべきことなのではないかと考えさせられました。